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にしてつの"こと"

持続可能な社会の実現に向けて  ~九州メタル産業株式会社の取り組みから

西鉄グループでは、国が掲げる、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること、「2050年カーボンニュートラル達成」に向けた取り組みなど、ESG・SDGs視点での社会問題の解決に資する取り組みを強化しています。

今回、北九州に本社をおくリサイクル関連会社『九州メタル産業(株)』での取り組みを紹介します。

「100%リサイクル」を実現

 九州メタル産業では、家電や自動車のリサイクル、産業廃棄物の処理を行っています。きめ細やかな分別技術、西日本一早く導入した巨大シュレッダーによる処理能力、あらゆるリサイクルを可能にした多彩なノウハウ。これらが「100%リサイクル!」を実現している『九州メタル』の実力です。100%、つまり"1%の不要なゴミ(ダスト)も出さない"という驚異の数値目標を実現する会社なのです。ちなみに、この業界では「ゴミを出す」=埋立地もしくは海洋投棄で"捨てる"を意味するのですから、文字どおり「1%も捨てない」は、「ゴミをすべて再資源化させ、この工場の門から送り出したものすべてを、最終的にまた"もの"に生まれ変わらせる」ということにほかなりません。

再資源化プラントでの作業。
非鉄の種類を瞬時に見極める細やかな選別技術

 持ち込まれる産業廃棄物は月5000トン。これらの廃棄物はまず、「鉄」「非鉄」「シュレッダーダスト(産廃として捨てられるプラスチック・ガラス・ゴムなど破片の混合物)」の3つの種類に分別します。非鉄とシュレッダーダストの中には木屑や樹脂、プラスチックなどまだまだ多種多様な物質が混在しています。それを人の手や、水、風力といった多彩なノウハウを用いて様々な手段で丁寧に解体〜破砕〜分別し、最終的に2mmほどの大きさになるまで繰り返します。丁寧に行えば行うほど、分別の工程は増えていきます。
篩(ふるい)など分別に使うために購入した機械を、社員で知恵を出し合い、使いやすく加工して使用しています。
そのため、17000坪の広大な敷地をもつ工場には、専用設備が次々に増えていきました。今では、巨大なシュレッダー、プレス機、粉砕機、定置ローダーなど様々な設備が工場に点在しています。

2000馬力の巨大シュレッダーを駆使するオペレーター室。車などの大きな鉄の塊をここから操縦して破砕します。

ごみから金属を見出す

では、なぜこんなに細かく分別処理を行うのでしょうか。  
 2008年まで、工場から出たダストは地元の埋立地へと運ばれていました。ところが北九州市がダスト処理を「海洋投棄」へ切り替えたタイミングで、写真のようなフワフワとした綿ゴミのような「シュレッダーダスト」を海に沈めるために、熱を加えて重く固化する必要が出てきたといいます。
 「その処理の際、この中に金属が混入していることに気づいたんです!こんな見た目ですから、それまで金属が入っているようにはとても見えなかったのです。よって全部埋立地へ捨てていたんですよ。もったいないでしょ!そこで金属を取り出し分別、売却するようにしたのです」と工場長の梅崎さんは語ります。

この取り組みが評価され、ASR(自動車を破砕して出てくる残りかす)の再資源化施設として認定を受けました。「日本中から見学者が集まりましたよ。こんなことやるのは日本でもうちだけでしたから。今でも埋立処分している会社はたくさんあります」と、梅崎さん。そして、こう付け加えました。「今や大手の会社も、リサイクル業の子会社を持ったり、直接運営を始めるところも出てきました。このダストは“宝の山”ですよ。スクラップ=汚い、はもう昔の話。私は、このリサイクル業はきっとこれから“花形”の職業になる気がするのです。世の中が必要としている技術なのですから、堂々と胸を張れる仕事です!」と。

手選別で回収した非鉄の中にはダイヤ付きの指輪や、純金、コインも!

最後に「正直、SDGsという言葉を聞いたのは最近です。私たちの仕事そのものがSDGsと捉えれば、何も特別感はありません。でも、世の中はめまぐるしく変わり、それにより求められるものも変わっていきますから、時代の変化だけはアンテナをはっておかないと、とんでもなくガラパゴス化してしまう。これからはSDGsなくしては企業として淘汰されると思っています。だから常に世界の動向、スクラップ価格の国際相場、アジアの需要などにも目を光らせています」と、梅崎さんはキリリとした表情を見せました。

西鉄バスもリサイクル!

また九州メタル産業では、廃車された西鉄バスを分別する作業も行っています。バスの廃車時期は走行距離100万〜200万㎞、使用年数10〜20年程度が目安とされています。

作業は、前処理としてまずフロンガス、燃料、オイル類、バッテリーの回収を行います。次に足回りをバーナー熱で切断し、先端に特殊なアームがついた解体機で車両の座席など内部部品を取り除きます。「粗破砕機」に投入したのち、2000馬力のシュレッダーで一気に破砕します。バスと同様に電車も解体を行い、すべての部品は有用資源としてまたリサイクルされます。ここでも、「100%リサイクル」のモットーは息づいています。

 九州メタル産業が取り組んでいるリサイクル事業そのものが、持続可能な開発を目指すSDGsの理念に沿ったものだといえます。九州メタル産業が創業した50年前はそのような表現すらなかった時代ですが、時代の変化の中で脚光を浴びるテーマになってきています。世界の動向やアジア市場にも目を向けながら、今後も九州メタル産業は持続可能な社会の実現に向けて歩み続けます。